う ヴェニスの畑
はじめて訪れたヴェネチアでの夕暮れ。ゴンドリエが歌う「サンタルチア」を聞きながらためいき橋をくぐったとき、「リトル・ロマンス」よろしくキスするのも忘れ、わたしはアドリア海を前に目をハートにしていた。ごめんヴェネチア、今まで「けっ、どーせ観光地観光地した場所なんでしょ」なんて思ってて。
と、隣りにいたオットがひとこと。「サンタルチアはナポリ民謡なんだけどね」
あーのーねーーーっ!今そんなこと言う場面じゃないから! そんなネタいらないから!
妻のハートの目が見えないの?どっちかっつーと、妻の肩を抱き寄せてチューする場面だから今!
とまあ、アンチ観光地ぶった旅行客など瞬殺してしまう観光地中の観光地、ヴェネチアなわけですが。
実はここでもワインが造られてるんですよ、ご存知でした?
1世紀頃にブドウが伝わりワイン造りが始まったそう。でも交易都市として栄え輸入ワインが増えたからワイン産業は衰退しちゃったんだとか。
その伝統を復活させようと、パドヴァ大学とミラノ大学、コネリアーノ栽培研究所と協力した研究チームによるプロジェクトが2010年にスタート。
まずはヴェネチア本島や周辺の島11カ所のレストランや個人宅の庭から80種のブドウを収集。ヴィティス・ヴィニフェラとしては、白はアルバーナ、ドローナ、ガルガネーガ、グレラ、マルヴァジア・イストリアーナ、赤はマルツェミーノ、ラボッソ・ヴェロネーゼなどが見つかったそう。中にはアルメニア原産の品種もあったとか! ついでに身元不明の品種も3つ。これはガイゼンハイムやモンペリエ、UCデイビスなどの大学で調べてもらっているとことだそう。
これらの品種をトルチェッロ島とヴェネチア本土のサンテマリア・ディ・ナザレ教会の庭園に植樹。
トルチェッロ島を選んだ理由は、5世紀にヴェネチア一帯で最初にイタリア人が住み始めた島だから。土壌は砂50%、粘土25%、石灰25%。年に7~10回は水が溢れるため塩分が高いのが問題で、水没しないわずかな高台に0.4haの畑を設け、大学で開発した塩害に強い台木を使用。昔と同じように赤と白の品種を混植している。
サンテマリア・ディ・ナザレ教会には庭園の改植に合せて6品種を植樹。ヨハネの福音書に「わたしはまことのブドウの樹、わたしの父は農夫である」からと、教会は喜んで協力してくれたそう。
試験用に醸造された混醸ワインを飲ませてもらったけど、素朴でスパイシーかつワイルドな味わいだった。観光地を魅了する派手でわかりやすいワインというより、オンブラで小魚のフリットでもつまみながらダラダラ過ごすのが似合うような。今はどうなってるのかなあ。また飲みたいなあ。
窓の外に夜明けが訪れる。群青の闇に沈んでいた聖イシュトヴァーン大聖堂が東の空に黒いシルエットを描き出す。川沿いに並ぶトルコ風ドームの温泉から漏れた蒸気が立ちのぼり霞となって街を包む。はじめてハンガリーを訪れたのは2004年の1月。半年後にEU加盟を控えていた。
昼過ぎにヘレンドに向かった。レストランのサービスプレートで見て以来ずっと欲しいと思ってきたが、おいそれと手が出せる価格ではないため、「本場の」「EU加盟前の」ヘレンドになら可能性があるかもと期待をしながら。(皆さんもきっと、EU加盟後はたとえユーロにならなくても日本円に対して値上がり感があり溜息をついた覚えがおありだろう)
しかし、いくら本場ハンガリーでも、EU加盟前でも、おヘレンド様に簡単に手の届くものはなかった。お皿一枚くらいなら買えたが、一人暮らしじゃないんだからせめて二枚はほしい。でも予算は二枚にとどかなかった。と、目に留まったのがボンボン入れだった。ころんとして可愛い。いいじゃないのこれ。デザインはアポニーを選んだ。ヘレンドグリーンをもっともシンプルに美しく表現していると思ったから。
寝る前に外すアクセサリー入れとして現在も愛用中、毎日、見るたびに、ドキドキしながら店のドアを開けたこと、ワイン産地エゲルに向かう途中の雪原に突如として現れた露天温泉の湯けむり、民主化後のハンガリーワインの問題点や現状を教授してくれた今は亡きワインメーカー、ガール・ティボルのことを思い出す。
五十音でめぐるワインの旅 <.. |
at 2021-03-12 12:25 |
五十音でめぐるワインの旅 「.. |
at 2021-03-12 00:29 |
五十音でめぐるワインの旅 「.. |
at 2021-03-04 22:01 |
DOUBLE FANTASY.. |
at 2020-12-29 10:59 |
スペシャルキットカット |
at 2020-12-16 08:05 |
ファン申請 |
||